ジャーナリスト中島恵さんに聞く──多様化する在日中国人コミュニティの実態

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中国に対する関心が高まる今、私たちの身近にいる「在日中国人」の実態はどうなっているのでしょうか?

日本語を流暢に話し、日本社会に溶け込んだ一般的な中国人のイメージだけでは説明できない多様な現実があります。

ジャーナリストの中島恵さんは、約10年にわたり中国人コミュニティを取材し、その知られざる多面性を深く掘り下げてきました。

中島恵さんプロフィール

1967年山梨県生まれ。

北京大学、香港中文大学に留学後、新聞記者を経てフリージャーナリストに転身。

主に中国や東アジアの社会事情を取材し、これまでに中国に関する著書を16冊刊行している。

「プレジデント・オンライン」「Yahoo!ニュース」「現代ビジネス」などの主要オンラインメディアにおいて多数の記事を執筆。

テレビ朝日をはじめとするテレビ番組にも出演し、コメンテーターとしても活躍。

10年以上にわたり在日中国人の生活やコミュニティの実態にも深く切り込んでいる。

公式ブログ:ジャーナリスト中島恵のブログ

NOTE:https://note.com/keikeinakaji

写真出典:現代ビジネス

\中島恵さんの最新著書/

今回のインタビューでは、中島さんの豊富な取材経験をもとに、在日中国人の多様化やコミュニティ形成の仕組み、富裕層の特殊な状況などについて語っていただきます。

さらに、日中夫婦の変化や今後の日中交流の未来についても、貴重な視点をお聞きしました。

この記事を読むことで、これまで見過ごされがちだった在日中国人社会のリアルな姿が見えてくるでしょう。

取材日:2025年2月9日

この記事を書いた人

このサイトの管理人、茜です。

1995年生まれ、滋賀県出身。現在は東京在住。

マッチングアプリで出会った中国人男性の健と1年間の交際を経て、2023年に結婚。

YouTubeチャンネル『日中夫婦 健&茜』で、中国文化・中国語学習・国際結婚などをテーマに発信しています。

中国のSNSを含めた総フォロワー数は7万人以上、累計再生回数は4,000万回を突破。

\動画にも出演いただきました!/

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目次

中国への関心は中学生時代から──中国との出会い

— 中島さんはどうしてそんなに中国にお詳しいんですか?中国が好きになったきっかけはありましたか?

中島さん:実は中学生の頃にさだまさしさんの中国ドキュメンタリー映画『長江』を見たことがきっかけでした。

80年代のことです。

当時の中国の映像や風景、そしてそこで暮らす人々の姿に感動して、それ以来、ずっと中国に惹かれ続けています。

— そんなに早い時期から中国に関心を持っていらっしゃったとは驚きです

中島さん:はい、気づけばもう40年以上になりますね。

大学生や社会人になってからも、どんどん現地の人々と交流し、取材を重ねてきました。

今では16冊ほど中国関連の本を書いています。

それだけの実績がある方に直接お話を聞けるなんて、光栄です!

在日中国人は多様化している──「健くん」タイプだけじゃない現実

— 在日中国人というと、例えば日本語が上手で日本企業で働く私の夫、健くんみたいなイメージが強いですよね。

中島さん:そうですね、そのイメージは確かに根強いです。

でも実際はそれだけじゃありません。

最近は日本語がほとんど話せない人も多くいますし、中国が嫌で逃げてきた富裕層もいます。

また、日本で働く旦那さんに帯同して来日した奥さんなどもいて、その人たちは自分たちだけのコミュニティを持っていることが多いです。

— すごく多様なんですね。

中島さん:そうなんです。

私自身、500人以上の中国人と知り合いになりましたが、日本に住んでいる人の目的も背景も実に様々です。

コロナ禍以降、特に富裕層が増えてきましたね。

— ということは、「健くんタイプ」がいわゆるメイン層だけど、その他にもかなりの層が存在しているということですね。

中島さん:そうですね、まだメインではありますが、彼ら以外の人たちは日本人にはあまり見えづらい存在になっています。

中国人のコミュニティはどう形成されている?

— 言葉の壁があったり、目的が違ったりするとコミュニティはどうやってできているんでしょうか?

中島さん:基本はWeChatという中国のSNSアプリが生活の根幹になっています。

日本にいても、中国にいるときと同じように、地域やマンションの住民、出身地や学校、職業などのグループが次々と作られていきます。

— 具体的にはどういう感じで広がるんですか?

中島さん:例えば東京のタワーマンションだと、1000戸中200〜300戸が中国人、というところもあります。

そこで不動産会社や誰かを介して一人知り合うと、WeChatグループに入れてもらえて、その中から共通の出身地や大学の同窓会、仕事のグループへと芋づる式に広がっていきます

日本人の連絡先交換のようにハードルが高くないですし、中国人同士は連絡先交換をためらいません。

気軽に『WeChat交換しよう』ってなるんですよね。

— コミュニティはあくまで自然発生的にできるんですね?

中島さん:はい。

意識的に『中国人コミュニティに入りたい』というよりも、生活圏や仕事、出身地で自然に繋がっていきます。

拒否しても無理です(笑)。

— 健くんのように両方の文化に程よい距離感を持つ人もいると伺いました。

中島さん:彼のように日本社会に溶け込みながらも、中国人コミュニティも適度に保つ人もいますね。

無理にどちらかに寄り過ぎて苦しくなるなら、使い分けが重要かもしれません。

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WeChatは中国人の生活に欠かせない存在

— WeChatの役割は本当に大きいんですね。

中島さん:はい。日本にいてもWeChatなしでは中国人コミュニティは成り立ちません。

生活情報の共有、ビジネス連絡、地域イベントの告知など、すべてがWeChat上で行われています。

— 日本のLINEとはまた違う感じでしょうか?

中島さん:LINEは日本人が使うもので、WeChatは中国人の文化や習慣に根ざしたSNSです。

WeChatは支払い、予約、チャット、通話などあらゆる機能が一体化しているので、生活基盤そのものなんです。

富裕層の中国人は日本語が話せず、コミュニティも限定的

— 富裕層の中国人は日本語が話せないケースが多いと?

中島さん:はい。彼らは日本語がほぼ話せず、中国語だけで生活しています。

ですから、日本人との接点はほとんどなく、コミュニティも中国語だけの閉じた世界です。

— それは日本社会との交流が難しいということですよね?

中島さん:言語の壁はやはり大きいです。

富裕層は高級住宅街などに住み、交流は富裕層同士の限られた範囲にとどまります。

なぜ西川口は“福建省”になったのか?——中国人コミュニティの広がりの裏側

— 年末に西川口に行きましたが、すごい中国人コミュニティができていましたね。

どうしてあそこまで形成されたんでしょう?

中島さん:そうなんですよ。

最初に行ったとき「えっ、ここ中華料理多すぎ!」ってびっくりしました(笑)。

不動産屋にも「外国籍OK」って貼ってあって。

川口や西川口って、10数年前までは風俗街だったんです。

それが一掃されて、空いた物件に中国人が入り始めた。

中華料理店を開いたりして、少しずつ根付いていったんですね。

あと芝園団地も大きいです。1990年代に中国人エンジニアが住み始めて、「ここ住みやすいよ」って口コミで広がった。

— 口コミで人がどんどん増えていったんですね。

中島さん:そう。中華料理を食べに来て「ここ住めば毎日食べられる」って(笑)。

で、実際住んじゃう。

— 街を歩くと、「四川料理」「湖南料理」みたいに地方色が強いですね。

中島さん:でも圧倒的に多いのは福建省。特に福清市出身者が多いです。

私が話を聞いた方は、一族200人で住んでるって言ってました。

— 200人!?

中島さん:遠い親戚含めてですけどね。

福建省の人たちは家族や地縁のつながりが強いから、誰かがいると安心して来られる。

— 移住にあまり抵抗がないんですね。

中島さん:そう。西川口には中国系の生活インフラが揃ってるし、子どもの教育目的で来る家族も多いんです。

自然に人が集まって、今の形になったんでしょうね。

「グイグイ来るけど悪気はない」——中国人と友達になる前に知っておきたいこと

— 都市部に住んでいると、中国人の友達ができることもありますよね。気をつけた方がいいことはありますか

中島さん:一番違うのは距離感ですね。

中国人って、急に誘ってくるんです。夕方5時に「6時から会おう」とか。

でもそれ、彼らにとっては普通で自然なこと。

— 日本人は事前に予定を立てるのが当たり前ですもんね。

中島さん:そう。日本人は「来週どう?」って聞きますけど、中国人は「2週間後の予定なんて分からない!」って感覚。

スケジュール帳も持たない人が多くて、予定は直前に確認しないと忘れられちゃいます(笑)。

— じゃあ、突然の誘いも「仲良しの証」って思えばいい?

中島さん:そうそう、同期の寮生活みたいなノリです。

あとね、中国人って、自分がいいと思った物をすぐくれるんですよ。お菓子とか化粧品とか。

— でも日本人は、つい「お返ししなきゃ」と思っちゃいます。

中島さん:そこが逆効果なんです。

中国では「返された」ってなると、距離を感じてしまう。

「私はあなたと親しくなりたくないのかな?」って。

もらったら素直に喜べばいいんですよ。

— なるほど。違いを知ってると、付き合いやすくなりそうですね。

中島さん:そうですね。細かいことを気にせず、おおらかに付き合うのが一番です。

変わる日中夫婦のかたち

日中夫婦で、面白いなと思ったことはありますか?

中島さん:昔は、今と全然ちがっていましたよ。

日本人の男性と、中国人の若い女性の組み合わせが多かったんです。

お見合い紹介所もあって、ちょっと怪しいところも多かったんです(笑)。

日本の50代60代の男性と、中国の農村出身の女性が結婚する、みたいな。

— 女性を「買う」ような感覚もあったんですね…。

中島さん:そうなんです。

しかも、在留資格目当てで来日して、空港で行方不明になるケースもあったり。

20〜30年前は経済格差が大きかったですからね。

— 最近はそのパターン、変わってきましたか?

中島さん:だいぶ変わりました。

ここ10年くらいは、むしろ日本人女性と中国人男性の夫婦が増えてます。

— 経済の背景も関係していますか?

中島さん:あると思います。

社会全体の流れとして、今は中国の方が経済的に強い地域も多いですし、日本人女性が中国人男性を選ぶケースが増えている。

あと、中国人男性って実は家庭的なんですよ。

それがSNSとかで知られてきて、「中国人男性=怖くない」って印象に変わってきた。

これからの日中交流の未来

— 最後に、これからの日中交流の未来についてどう思われますか?

中島さん:コロナ禍が明けて、また人の行き来が活発になっています。

中国はまだまだ成長を続けていて、両国の経済や文化交流は増える一方です。

在日中国人の多様性を理解し、コミュニティの実態を知ることが、より良い関係を築く鍵になると思います。

— 本当に勉強になりました!本日はお時間を作っていただき、ありがとうございました。

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